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煙草は崇高である/リチャード・クライン

煙草は崇高である/リチャード・クライン表紙画像

書誌データ: Richard Klein,Cigarettes are Sublime (Durham:Duke University Press,1993. Japanese transration rights arranged with Duke University Press through Japan UNI Agency,Inc.,Tokyo.)『煙草は崇高である』太田晋・谷岡健彦訳,太田出版・1997年

ジタン(もちろん日本版ですが)をよく吸っている。その文学的な由来などが書いてあり,はじめて知ることが多い。例えば,

ジタンは最初の「現代的」煙草と考えられているが,それはある情熱的な女性の商標が描かれた箱に入れて売り出されたからである。ジタンの暗い青の箱には,扇とタンバリンとセビリヤのオレンジをモチーフにした絵が描かれていた。これらはすべて[オペラ『カルメン』の]原作となったメリメの小説に登場するものであり,カルメンのジプシー流の結婚式を彩るものでもある。カルメンは,ドン・ホセと一夜を過ごし,彼を自分のロム(亭主)にして,自分は彼のロミ(妻)になろうと決心すると,ありったけの金を掻き集めて甘いものを買い込む。《中略》まるで,彼女の甘い物好きには限度というものがなく,また彼女が自分自身や,幸運にも彼女に愛されることになった不幸なものたちに見せる気前のよさにも際限がないかのように。彼女は床にぶつけて割った皿のかけらをカスタネットのように打ち鳴らし,その比類のないスタッカートのリズムに合わせて身をくねらせる。彼女はまるで黒壇か象牙のカスタネットを打つように,情熱的に皿を鳴らし,退屈を紛らわせる。彼女の踊り,彼女の激しいジプシーの踊りを止められるものは何もない。その踊りが描く,情熱的な欲望を孕んだ小さな円は,彼女 の煙草から立ち昇る煙の輪へと形を変えて受け継がれてゆくのだ。(訳書185−6頁より引用)

と。ジタンについての言及はかなり詳しく,本サイトでジタンを取り上げる際には,サイタ社(ジタンの発売元ですね)のサイトともに,重要な参考文献となるであろう。序文には著者がヘビースモーカーであること,さらに,この本自体を煙草と同じように一服するつもりで読んでもらいたい,と書かれている。

反喫煙群の面々は,自分たちのポジションが孕んでいる歴史的アイロニーを,ほとんど意識していない(訳書42頁)

という,ここだけ読めばおそらく嫌煙運動を行っている人々,受動喫煙の被害について考えている人々はいやがるであろう。しかしながら,本書は,その訳者の後書きにも記されているように,本来禁煙のためにかかれたものである。いったい上記の引用から伺われるものとその目的となんの関係があるのか?と問われる向きには,まあよんでみなさい,というしかない。煙草についての著者の立場,立論については,あらためて取り上げたい,と考えている。
written by

睡魔

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