学校怪談勝手に最終回〜睡魔ばーじょん


「もう邪魔立てするものとて無し。 そろそろもとの姿に戻るのも一興だ。」

そうミゾロギがつぶやくとその姿が見る見るうちに変わって行く。
細身の体だったはずのその腹はせり出し, その表情はあの自らが感染して行った時の禍禍しさをも凌駕する。
左目だけではなく両の目はくぼみ, 金の豊かな髪がいつのまにか消えうせている。

「おまえは!」

細身の黒いスーツの背中に大きな翼を持つその「天使」はおもわず叫ぶ。

「冥王星のものどもとの契約はまだ完了していないのだよ」

溝呂木博士はつぶやく。
「こいつへの寄生ももうおわりだ」

刹那,その場に光が満ちる。

「今だ山岸!」
「いくわよ九鬼子さん」
「あたしもやっぱやるのー」
「そゆこというのはこの口か。やるんだ那由子」
「ふがが。わかったわよ」
「おい。お前も覚悟をきめろ」

棟方征四郎は突然黒い天使に語り掛けられ振り返る。

「いったいなんのことだ」
「九鬼子を守るのはこれからはお前の役目だ。今,お前は媒体として俺に力を貸すのだ」
「僕もお願いする」
ミゾロギが,溝呂木博士へと変貌を遂げたはずのミゾロギが語り掛ける。
「僕は確かにゆがんでるよ。
だけど何時の頃からか心とやることのバランスが崩れ始めた。
九段先生を悲しませるのは僕の本意じゃない」

溝呂木博士の背後から暗闇が広がる。
206便は完全に闇に包まれているばかりか, その中までもが闇になる。

井戸の中のその建物と206便の闇が一体となる。
夢幻の血筋がなせる技か, 九鬼子への愛がなせる技か。
禍禍しい溝呂木博士の闇は収束して行く。

後に残される九鬼子と棟方征四郎。
影からみまもる皆。
黒い天使が去っていく。 じっとその姿を見つめる山岸。

「そろそろお役ごめんかな」
「そうだといいんですけど」
「君には他に守るべき人がいるのだろう?」
「・・・・・・あなたは九段先生の・・・」
「味気ないタバコはあまり吸いたくないんでね」
「・・・」

後には紫の煙。

後日,幸せ絶頂の九鬼子は授業を終えての帰り道にミゾロギらしき影とすれ違う。
なぜか印象が薄かった。

「悪いことしたかな。
ううん。
そんなことないよな。
ね,おじいちゃん」
「素敵なお兄様と呼べといったろう?」
「うふふ」

劇終


学校怪談勝手に最終回〜睡魔ばーじょんEND


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