『屋上で…』


☆

「山岸先生〜!」
この間の事件以来、万条目が昼休みになると付きまとってくる。
あの事件はくれぐれも他言無用だと言っておいたのだが、
何かというと職員室に押しかけてきてたわいも無い相談事をもちかけてくる。
学校イチの美少女に付きまとわれるのも悪くはないのだが、
雰囲気が八千華に似ていてどうも・・・。
それに、職員室にいる限り、双葉と八千華の目線が怖いのだ・・・。
じとーっとこちらをにらむ目つき・・・。
「ま、ま、屋上にでもいこうか。天気も良いし。」
「ま、屋上に行って何をする気かしら。」
「天気も良いことですしね〜。」
双葉と八千華の冷た〜い視線を浴びながら、
僕と万条目は弁当を持って屋上へ向かった。
屋上は職員室の雰囲気と打って変わって明るく、気持ちの良い空だった。
万条目と弁当を広げようと思った瞬間に、
「せせせ・・・先生・・・アレ。」
「何だ?あっ?」
屋上のフェンスの外に今にも身を投げ出さんとする生徒が一人・・・。
僕は無我夢中でフェンスを乗り越え、
その瞬間、『バカーッ!!騙されるな!!山岸!!そいつはおとりだ!!』
という声が響いた。振りかえると、
“もうひとり”の生徒が僕を突き落とそうとしていた。
僕は無我夢中で“払い”をかけた。
多分眼は金色に輝いていただろう。
幸い、“払い”は成功して、僕はすんでのところで4階からの落下を免れた。
それにしても、あの声は・・・。
僕はフェンスを上って戻ると、気を失っている万条目の所に駆け戻った。
「九段先生・・・先生だったんですね。万条目君の身体を借りて・・・。」
「先生・・・?」
僕はうっすら目を開けた万条目を抱き上げると、
そっと感謝の抱擁を・・・。
とたん、屋上入り口から、
「あ〜っ!!ヤマギシ!!何を!!!遅いと思ったら!!」
「山岸君・・・信じていたのに・・・生徒に手を出すなんて・・・。」
「いや、これは・・・違うんだ・・・九段先生が・・・。」
という叫びも空しく。
女難の相はまだまだ続くらしい。

☆

written by ちゃいなタカシ


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